カウンセリングをやっていると、例えば、親子関係で悩んでいる成人のクライエントの方から「なんでお母さんはわかってくれないんだろう」というボヤキが聞こえてくることがあります。
「お母さんならわかってくれるはず」
「親なら子供の気持ちぐらいわかってよ」
そう思うのは、子供として、当然だと思います。こういう思いを持つのは親子関係だけではありません。恋人関係、夫婦関係でも生じます。
「なんでわかってもらえないんだろう」という気持ちが生まれるのは、『甘え』が一つには関係しているかもしれません。
甘えは、相手に対して無意識的な依存したい気持ちの表れであり、その人個人の問題として、大人になりきれてない部分があったり、健全なレベルでの退行によって生じたりします。個人的に解決しようと思えば、個人が成長する必要があるでしょう。
一方、この問題を家族療法的に捉えると、家族療法家のBowen（ボーエン）という人が、「家族間の問題は、自己分化がうまくいってないことから生じる」との趣旨のことを述べていて、「自分の感覚が他人（家族）も同じである」、あるいは、「自分の感覚は他人（家族）が共有して然るべき」と考えてしまうほど、自己と他者を同化させてしまい、「私がこうしたいのになんでわかってくれないの！」と怒りや悲しみが生まれてしまうのです。
大事なのは、「自分と家族は、あくまでも存在としては他人の間柄である」と認識して、自分の感覚が他人と共有できないのは当たり前のことだと理解しましょう。それを理解するだけで、家族関係がグッと良くなっていき、「なんでわかってもらえないんだろう」と思うことは減ってくるずです。
「なんでわかってもらえないんだろう」と悩んでいる人は、自分と家族の間に距離を取るようにしてみることをお勧めします。